東方神起BL小説Ⅵ『果実のない街』24

…「もう春まで、出ないな」途切れた水道を軽く叩く。「おれに話あったんじゃ…?」振り向いた。高い鼻梁を、真冬の影が深く彩る。
 ────────  「失せたよ。そいつなら…」あっさりイボンは云う。「失せた?」「急に、居なくなった」「…除隊したんですか」
 遠く、落日を眺め、イボンは言葉を継いだ。「脱け出したらしい」「脱け出し…? 脱走ですか」「…そうなるな」チャンミンに子供の笑い顔を向けた。

 ──……「─だけど、妙な奴だった…」暗い濃い日没の深い陰りの中、イボンは静かに話した。「写真撮ってくれって云うんだ…」「─え?」「シャワー浴びながら、自分は色んなポーズとるのが好きで、キレイだから残したいってよ」「写真に、ですか」「呆れた野郎だろう?」…軽いため息。「よく、自分の顔や体をからかわれると─逆上してた。…ナルシストだからな」凍る翳に、チャンミンの端麗な顔が俯く。
 「兵舎帰ろう」陽気な口調で、イボンがチャンミンを促した。
 彼方の瀕死の冬の日が、残照の朱を霞めながら、落ちてゆく。
 …黙り込んで歩くチャンミンの軍服の背中に、「今夜も凍りそうだな」大きい掌が柔らかく当てられた。



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