東方神起BL小説Ⅵ『果実のない街』28

 中でゴトリと重い音。少年はまた、路地裏に回った。
 

 …数分後。パトカーと救急車の到着で、さびれた路地裏はにわかに騒がしくなる。それを尻目に、銀の長いヒゲの獅子のような、堂々とした体躯の雄猫が、開けっ放しな勝手口に入り込み、ガランとした厨房をアチコチ嗅ぎ回りはじめた。


 死人のように、真っ青顔の少年がパトカーに乗り、薄い茶の毛布の担架を積んだ救急車が、サイレンと共に走り出す。
 ─立ち込めていた雲が切れて、朝の日差しが路地を照らし始めた。



 「それで彼女の容態は」刑事が首をかしげ、「様子を見守るしか、ありません」若い医師が云った。
 開けられたドアの中は少し、薄暗い。
 「…落ち着いてます」スラリとした看護師が、ベッドの脇からしっかりした口調で告げる。
 「お知り合い、でしょうか。ユンホさん…」目をつむり、横たわっている若い娘を覗き込み、刑事は尋ねる。
 「見覚えは…ありません」─刑事も医師も、ため息をつく。
 「運ばれて…体は昨夜の雨で、冷えきって─」童顔の若い医師がポツポツ話し出す。「ようやく、体温が戻ったら─」「チャンミンさん、と…」医師が頷いた。


ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのトラックバック