東方神起BL小説Ⅵ『果実のない街』34

 「それが軍隊と…」「自慢たらしく、おれは軍隊を特別に除隊した。なんて、云うやつでさ」「特別な除隊を…?」「妙なやつだし関わらないほうが良いよ。─そいつ、探してるやつ?」腕組みして「仲間のバイト先のそいつ常連で─おれは手伝いに行ってたんだ…」「バイト先?」「ポルノ・ショップだよ」



 肩にまわされた手にいきなり、力が籠められ耳元から首筋に生温かく息がかかる。腰にも、まわされた手の手首をつかみ、引き剥がした。
 つかまれた手首が思いがけない力に、痛んだらしく顔をしかめ、チャンミンを睨もうとして、黒い光の底知れない瞳に見据えられ、薄暗がりに逃げ消えた。
 そのやりとりに、魅せられたようにチャンミンの背中から、腕にしなだれかかる─。甘い匂いの強い香水…。ポルノ・ショップの奥は、中に行くほどに暗い。闇夜のトンネルそっくりに細長く、先は見えない。─体じゅうに香水を振り撒いたような、白いドレス姿の人物が、チャンミンの行く手を塞ぐような動きになり、首に両腕をまわしてきた。
 「ねえ。どこ…行くの? ひとり…?」相手は顔を反らせ、喉仏がわずかな淡いパープルの照明に、小さな影になる。「誰か─探してんの?」


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