東方神起BL小説Ⅵ『果実のない街』21

 …愛しげにチャンミンの頬を両の手で挟み込む。   その姿勢で椅子からゆっくりと立ち上がりながら、「お前の性獣を…今夜も虐めてくれるかい?」おどけた表情の瞳が、チャンミンを覗いた。  ──「あの、若造がッ…」「しかし、彼はもう32でしょう? 若くはない」四方を海に囲まれた眺望が蒼く美しい、ホテルの一室。最上階の部屋らしく…
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東方神起BL小説Ⅵ『果実のない街』20

 リビングにユノの姿がない。…廊下の先の個室を開けると、法律書に埋もれるように、ユノがいた。「珍しいね、─ユノが、…ピンクフロイド─」「うん。『狂気』…特集番組だって」傍らのラディオの歌声を途切れさす…。  細縁のメガネをかけ、書物に囲まれるユノは、レポートに取り組む、学生に見えた。  本の一冊を手に取った。「猛勉強して…
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東方神起BL小説Ⅵ『果実のない街』19

……(よくこんな恥ずかしい格好が出来るなって…僕感心するくらいです)─(あれで、品行方正で…クリスチャンですからね)…─クックッと、喉奥で笑い、「まったく…お恥ずかしい」明るい笑いが止まらない。「こんな内々のことを…私の躾が至りませんで─」笑い声が高まった。「まだまだ、子供だ…」ひとしきりカラカラと笑うと、その笑顔を向け、「わざわざ、こ…
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東方神起BL小説Ⅵ『果実のない街』18

「ぼーっとしてでっかい図体で突っ立ってんなよ」風呂の中から、男がガミガミ云う。ヒステリーを起こしたちび猿の表情で、チャンミンに、「早く、ちゃんとやれって」スポンジタオルを放って寄越した。 「失礼します」貧弱な背に、スポンジを当てがった。 チャンミンが浴槽に体を近づけると、女がチャンミンの背中をさすり始める。  それに構わな…
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東方神起BL小説Ⅵ『果実のない街』17

 「…ね、あなたも、早く脱いで」ちろりちろりとチャンミンを見ながら云う。「濡れちゃうじゃない」狭い浴槽の中で、田んぼのカカシそっくりの身体の男と抱き合い、流し目をおくってくる。「そうですね…」チャンミンが素直に服を取り、体をあらわにしていく。  風呂に浸かりながら、二人の男女は揃って横目を使い、チャンミンの体に視線を這わす。(一体…
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東方神起BL小説Ⅵ『果実のない街』16

増築された場所なのだろう。せせこましい脱衣場のあちこちに、妙な突っ張りがあり、狭苦しいところを、更に雑然と見せていた。その片隅で、ヒョロリとした若い男はボンヤリ縞のシャツを脱いだ。  ちょっと突っつくだけで、折れ曲がりそうな身体つきだ。   ─背に柔らかく、ゴムまりのような、はずむ感触をチャンミンは不意に受けた。  「…や…
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東方神起BL小説Ⅵ『果実のない街』15

 暫く、ゼェゼェと途切れがちな荒い息を、吐き出しつつ、チャンミンの腰を抱きかかえて、あちこちに節くれだった指を、死にかけの蜘蛛の動きでまさぐっていたが、やがて、泣き笑いの老いの皺が目立つ顔で、チャンミンから離れる。  照れ臭そうに、鼻を擦りながらチャンミンを見て、「…若い─」しんみりした、口調で云う。ボテボテの巨大な肉塊の身体…
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東方神起BL小説Ⅵ『果実のない街』14

 ドブ底から涌くような笑い声が、違い棚の置物や壁の絵をビリビリ震わす。巨大な餅を思わす初老の男が、意味もなく笑っている。「若いな、いくつかな」「…30です」同じことを何度も聞いてくる。「いい体格だ、どのくらいだ」「188です…」─それに、クドい。「ワシは酒はやらん。─キミは若いんだからドンドンやりなさい…ドンドン」また、怒鳴るがごと…
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東方神起BL小説Ⅵ『果実のない街』13

 何ごともなかったかのように、マリネーと温野菜のサラダに、フォークを入れるユノに「お分かり頂けたのかしらね」疑り深い声が訊く。 「チャンミンに伝えます。…それでよろしいのでしょう」ワインを口に運ぶ。「まぁ…、あなたの云うことなら、何でもきくんでしょうから」「さあ…?」その気のない答えに、細い眉毛が、ピリッと、はね上がる。「頼り…
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東方神起BL小説Ⅵ『果実のない街』12

 透明な背の高いテーブルにメモがあり、(昼食の約束がある─)とユノの字で書かれている。ソファにかけると、ポケットのカードを取り出した。別れ際に、レオンから手渡されたものだ。  銀の数字が並んでいる。スマホの番号だ。カードの裏を返す。─蓮。と一文字がある。  窓辺が薄くグレーの幕を下ろした色に、変わって行く。朝霧が細かな雨…
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東方神起BL小説Ⅵ『果実のない街』11

 コーヒーを注ごうとして「バター、入れる? からだ温まるよ─」チャンミンが頷くとひと欠片、淹れる。  「俺は今朝、ジム行くからシャワーそこで使うし、─浴びたら?」部屋の奥の細長いドアを指す。  …ドアはマホガニーに近い色合い。開けると全身の映せる鏡。小型の洗面台もある。  ─熱いシャワーは、水圧が強い。皮膚に、痛い…
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東方神起BL小説Ⅵ『果実のない街』10

 …人の気配に、目を開けると、レオンが自分を、見下ろしている─。  右手に銀のキラリと光るものがある…。 「─起こしちゃったか」  右手をあげ、「目覚まし時計。…止めとこうと思ってさ」それを棚に戻し「起きる? 朝食とって帰りなよ」…結局、レオンのベッドに、眠ってしまったらしい。  夜はすっかり明け、大きい窓の外は…
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東方神起BL小説Ⅵ『果実のない街』9

 ─(あそこまでやらないと…満足できないって─)…エンジンの重苦しい響き。(─異常だよ奴は…)─遊ぶ子供たちの甲高い叫びを思わせる騒々しさに掻き消される─。…放課後の学校のグラウンドを思わす兵舎の外庭─。(…軍用トラックだ─毛布積んで来たんだろ)(まだ暑いのに─?)問いかけると(ここはソウルよりうんと寒い…)肩をぐいぐい後ろに押しやった…
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東方神起BL小説Ⅵ『果実のない街』8

 チャンミンは男の顔をじっと見る。「レオンて、呼びなよ」…ビールをチャンミンの前に置くと、喉に流し込む。「彼女─マダムは?」「フミさんか…? 寝たよ、愛犬抱っこして」 空のグラスをテーブルに置いて「今夜、朝までそこ座ってればいいよ」少し笑うと、口元に細い皺が出来る。 「眠くなったら、俺のベッド使っていい」チャンミンのグラスに…
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東方神起BL小説Ⅵ『果実のない街』7

 どっしりとしたソファがぐるりと部屋を取り巻く。 「ね…? 良いわよ、もう座って」ソファの近くに立っていたチャンミンを、気が済むまで眺めたらしく、そう云い、コートを脱ぎ「うちの坊やも可愛いのよ」コートの毛皮の部分を撫で、突然それを後ろに向けて投げる。  「…ねーぇ?─」毛皮の落ちた後ろの両開きの扉に呼びかけた。 同時に…
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東方神起BL小説Ⅵ『果実のない街』6

 シルバーの自動扉が開きチャンミンをのみ込んだ。  そばに立つ女が、コートの毛皮をかき合わせ、チャンミンの横顔にねっとりと視線を這わす。 「大人しいじゃない」急に耳元に分厚い唇を寄せてくる。「…」黙ってわざと眉根を寄せ、困り顔を作る。 「あらぁ、そんな緊張しないの」弾力あるヒップを押しつけられる。強い香水と化粧の匂いに、顔…
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東方神起BL小説Ⅵ『果実のない街』5

 「あのひと…」チャンミンの顔を正面から見て「これだけ探して…見つからない─」また咳込む─「だからといって、もう─諦めることにならない」サイド・テーブルにある水差しを注ぎ、チャンミンが渡す。「あ、…有り難う」無理に作った笑顔を見せる。 「少し、椅子傾けますから。休んで─」目を閉じ軽く頷いたが、また咳込む─。 (もっと、ふくよかで、顔も…
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東方神起BL小説Ⅵ『果実のない街』4

 その言葉にユノは小さく微笑う─「自分で決めたことだもの。─それよりユノ…引退だなんて」「俺も自分で決めたことだよ」俯くと、「ユノが、─脚がそんなに悪かった…なんて思いもしなかった」そのまま、うなだれる。「俺たち二人だけの事務所でもオーナーなんて、初めてだし」朗らかに、続ける。「アンヨのご機嫌が、また戻れば復帰するよ」…チャンミンは…
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東方神起BL小説Ⅵ『果実のない街』3

 「そう若いわけでありません。そのぶん、経験もあるし…妙な恥らいもしません」目元に微笑いを浮かべ「それに…私もかわいがったし、仕込んだ私をよろこばせようとする─可愛気がありますよ」 年がいもなく顔を赤くする男二人。 …チャンミンは何の色も顔にのぼらせない。  咳払いした小肥りの方が、ユノの顔を見て視線を落とした。─男二人はユノよ…
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東方神起BL小説Ⅵ『果実のない街』2

 …再び、二人組は黙ってしまう。ユノは紫煙を吐く… 「拾い上げた野良の仔猫が、思いがけなく虎に育ってしまった」 小さく、笑う…。「そうなると、餌代も嵩む…檻も大きくしなければ─ね」「それでお二人で独立を」葉巻の煙がしみるのか、小肥りの方が目をパチパチさせた。「そう。虎は野に放っても、恩忘れませんからね─」今度は唇だけ笑った。  …
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