東方神起BL小説Ⅵ『果実のない街』1

 まるで部屋の中は、落ち葉の舞う黒く深い森の中にいる気分にさせる。…漂う紫煙が、先刻から枯れ葉の匂いを立ち込めさせているのだ。  「どうされました? 」…葉巻を口から離し、僅かに眉を寄せて、尋ねたがどこか、面白がる響きがあった。  向かい合う二人組の男は顔を見合せ、曖昧にうなずく。  「ご不快ではない? …驚かれましたか」 二…
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東方神起BL小説Ⅴ“天窓のあるガレージ”21

 ─翌早朝…。ふたりは、ドルジェとコテージに別れを告げ、ソウルへ帰路についた。…帰りはヘリコプターの替わりに、黒服の運転手の走らす白いリムジン型の車だった。飛行場まで、海岸沿いを数時間、走った。  ─車に乗り込む前、嵐の夜に突風に部屋が揺れて、倒れた砂時計に海の砂を入れ、蓋を閉め直した。  …─短い、思いがけない…
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東方神起BL小説Ⅴ“天窓のあるガレージ”20

「ご主人さまと私と。それきりでは重すぎる話でございます。どなたかにも背負っていただかないと─辛すぎる、思い出なのです」─ホールの次の間に、吸い込まれるようにドルジェは消える。  …夜の香りにのって何処からか海風がやって来て─ふたりは足元に波が打ち寄せてくる感じがした。  ─真夜中すぎ…ため息を吐き、ふたり、体を離す─…
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東方神起BL小説Ⅴ“天窓のあるガレージ”19

 ドルジェの瞳は一瞬、大きく開かれ、輝く─。「最後…」ユノの呟きに、深くドルジェはうなずいた。「コテージもすっかり古くなりました」─指し示されたカーテンは、張りを失って垂れ下がる…「明日、お客様方がお発ちになりましたら…私ども、ここを引き払いまして─建物も更地になります」ジャスミン茶を新たにふたりに注ぐ。 「あのう─」俯いてじっと話を聞…
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東方神起BL小説Ⅴ“天窓のあるガレージ”18

 ……「それ…スラッシュも見ていたの─?」静かに、目を伏せたまま、ドルジェは首を振った。「ご信じにならなかったご主人さまは、私どもを詰られました」 傍らに小さい手で、銀のワゴンを引き寄せる。「おひとりで、海に…」ワゴンには香菜と蒸し鶏のゼリーのスープ。「私どもが、寝入った時間に─けれども幸いと申しましょうか…突然の嵐で海には潜れず─」ス…
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東方神起BL小説Ⅴ“天窓のあるガレージ”17

 「あの方は…坊っちゃま─ご主人さまの、大切な方でございました…」─その夜。ふたりにコテージでの最後の晩の食事を出しながら、ドルジェが話す─「…或る年の夏の終わり、─急におっしゃっられたのです。…海からこのコテージを見たいと─」…スラッシュは、陽が落ちる前に大陸へ発った。ひとことの挨拶も無かった。代わりにドルジェが全てを話すつもりらしい…
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東方神起BL小説Ⅴ“天窓のあるガレージ”16

 「…チャンミン」スラッシュの姿に気づかずに、ユノは自分の腕を差し上げ、見せ、笑う。「ほら。割れてる…」銀のブレスレットの中央、時計の文字盤はヒビが、入っている。 「あ…、折角の時計なのに」「俺あの時すごい力で、引っ張られて…」海にチラッと目をやって「僕、思いっきりユノを引き止めようって─」指先は、割れをなぞる。「でも、どうして」ユノ…
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東方神起BL小説Ⅴ“天窓のあるガレージ”15

 ─白い波が泡に変わり、脚を洗って行く…。─ふたりはお互い擬っと黙ったまま沖を、水平線の果てを見ていた。  ─昨夜…日が落ちてから、また霧が海からやって来て─前の日の夜、嵐の直前に海から来たびしょ濡れの若い女がまた、コテージの前に現れた。彼女は、今度は後ろ向きで、長い黒髪は濡れて揺れる。1階のテラスにいたふたりが見ていると、黒…
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東方神起BL小説Ⅴ“天窓のあるガレージ”14

 呆然と窓から、海岸を見下ろすふたりが更に仰天したのが、コテージの死角に消えた濡れネズミの若い女に、追い縋る格好のふたつの、黒い影が、暗い海面から湧き出たことだった。影たちは海の向こうからの、霧に紛れて長い髪の女の、すぐ後を走り辿る。 …チャンミンが突然、部屋を出て行こうとする。「チャンミン…?」「助けなくちゃ─」ユノを振り返りもしない…
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東方神起BL小説Ⅴ“天窓のあるガレージ”13

(海水が生ぬるい─)海からの風が、重い午後、(嵐、になるかな…)空の、深い怒りを込めた色と動きに、追い立てられたようにふたりは、コテージに入った。もう遅い夜になったのだろう。ラワン材の大きな楕円の、敷物に寝そべったふたりは開け放した扉の窓から、蒼ざめた闇の空を見ている。 「もう4日になりますね、連れてこられて」「休みは3日間だったけど……
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東方神起BL小説Ⅴ“天窓のあるガレージ”12

 ─夜の海は、思うより、明るい。…波の音は耳に、昼間より大きい。 「やっぱり、…お前─」ユノの言葉が途切れる。「…わかった、よ…」─夜の中でも、ユノが微笑ったのが、チャンミンに分かった。…砂を掬う仕草、潮の香りがきつい。「重いって、こと…ですか」「そう。─ア…」自分の頬に押し当てられるチャンミンの耳に、「こうって初めてだな」チャン…
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東方神起BL小説Ⅴ“天窓のあるガレージ”11

 「何見てたんです」冷えたグラスに、唇をつけ、聞く。「昨日のさ、…気になって」ビールを注ぎ足し、答える。「それらしいの…見えました?」フッと唇に笑みを浮かべて「見てはいたんだけどね─」沖合いの入道雲が、近くに来て─空の高みから陰がさす…。それでも海の色は変わらない青だった。「海の怪物─竜…?」遠く白い波頭も望める。「さぁ─、何がいても不…
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東方神起BL小説Ⅴ“天窓のあるガレージ”10

 コテージの角を曲がると、サン・デッキに出る。─上半身を海風に晒しながら、ユノはドルジェに何か話している。椅子の高い背もたれに、体をゆだね、小柄な背丈を更に屈めたドルジェを、見上げた横顔が若い王の表情だった。一礼したドルジェが側から離れると、海に、目をやる。風が髪を、流れて行く。自身の王国の海を、眺める姿にも見えた。丸いテーブルに歩み寄…
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東方神起BL小説Ⅴ“天窓のあるガレージ”9

 何げなく、顔を上げてチャンミンは、目を見張る。─沖でキラリとした。船かヨットなのか…動きがうねる波そのままで─「ねッ…ユノ、ユノ起きて」裸の肩を、揺さぶる。ようやく、薄目を開け、砂に顎をのせる。  「生きてる─アレ…」半透明な白っぽい巨体が、遥か沖で、水平線を捻曲げる勢いで、泳ぐ─「…怪獣…?」あ然としたユノの声。巨体の生物は、長い…
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東方神起BL小説Ⅴ“天窓のあるガレージ”8

 チャンミンは濡れたユノの服を手に取り、もう一度絞ると、広げて、一枚一枚、岩に並べる。「キャッ…」視線に気づき、厚い胸板を両手で、隠す。「ユノの裸は今さらです」「アラ?…私、人魚姫よ」寝転び身を捩った。椰子の太い幹に片手をついているチャンミンに「アナタ…素敵ね。王子様?」脚をくねらせる。「私、裸のマーメイド…」チャンミンは吹き出した。「…
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東方神起BL小説Ⅴ“天窓のあるガレージ”7

─コアラの格好で椰子にしがみつく。「…あぁっ?─」すっとんきょうな声が、やがて、上から降って来る。「…おっ…スゲェ─」ため息までつく。「巨乳、ウ~ン爆乳だね!」チャンミンを見下ろし「あっちさ…金髪で、こっち見てる。お前も早くはやく」「何が早いんです」渋々、降りる。「アーッ。俺どうしよ…? ウィンクされちゃって」 聞こえないフリのチャン…
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東方神起BL小説Ⅴ“天窓のあるガレージ”6

 ユノは脚元に絡みつく、パウダーのような砂を蹴る。サンダルを、濡らそうとする海水をチャンミンは、優雅にかわす。「本名かな。─スラッシュって」「ミスター・スラッシュ。呼び名でしょう」 ─朝の潮の香りは、体の全てを、洗ってくれる。「…スマホも、帰りに返すって…、何だろう─?」 …昨夜はシャワーとパジャマを与えられ、泥のように眠り─今朝はドル…
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東方神起BL小説Ⅴ“天窓のあるガレージ”5

 うっそりと部屋に現れた小柄な人物がうやうやしく、頭を垂れる。「あの僕ケガしてません」「服に血がついてるじゃないか」笑ってユノは「これは錆びです。座ってついたんです」 小柄な人物が静かに顔をあげる。その表情のない顔にスラッシュと名乗った男は顎をしゃくり、出ていけという仕草をする。「あのう。僕たちどうなるんです」黙って成り行きを見ていた…
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東方神起BL小説Ⅴ“天窓のあるガレージ”4

 脳まで、貫く鈍い疼きに、呻き、身体を立て直そうとすると、辺りをキョロキョロ見回すユノが、いた。「やぁ─」軽く片手を、ユノは挙げる。しなやかな身ごなしで、白いソファーベッドから、下り「大丈夫か」チャンミンを見つめる。 「ユノ。…ユノだって─」自分も起きようとして、めまいと背中に、違和感があり…チャンミンは、項垂れてしまう。 「顔色おかし…
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東方神起BL小説Ⅴ“天窓のあるガレージ”3

 轟音と振動に自分たちも、揺さぶられる気がする。 それは薄い黄色で、まるで、月の一片が、欠け落ちたに見えた。 「…地獄の黙示録、みたいだ─」ヘリコプターは速度を落とす。「─何…?」ヘリの下から揺れたロープが降り─真っ黒な、人間らしいものがぶら下がる。「訓練?」「…今日、防衛の日、─? 違いますよ…」  ─丸い窓に、黒い…
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