テーマ:連載小説

東方神起BL小説Ⅵ『果実のない街』41

「ユンホさんとは今夜きり、お会いはしないでしょう」女王の威厳の姿に影が掠めた。「それでも、全てをお話する時も…遠くありません」「─終わりが近づいている…と?」「それも、過去からの…長い出来事の結末です─わ…」独り言のように云うとそれきり、ユノの存在を忘れたように、深い物思いに沈んだ。  ─片方の頬に、熱い火でも…
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東方神起BL小説Ⅵ『果実のない街』40

 ……ソウルの街中にあるとは思えない、静けさを破るように「─マリィさん、彼女にお大事にと…お伝えください。ともかく─彼女の今後をお任せできることに、安心しました」「…ユンホさん。チャンミンさんのことです─」真っ直ぐな視線が、ユノを捉えた。  「チャンミンさんを、お止めするようユンホさんに、お願いしたいのです」口を開きかけたユノに「ある…
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東方神起BL小説Ⅵ『果実のない街』39

 ─「お電話で急に、お会いしたいとユンホさんに無理を申したのも─チャンミンさんのことなのです」ユノの瞳が微かに動いた。「…その前に、お伝えすることがあります」カフェ碗を置くと、「あの娘を、私どもが引き取りました」髪の影で、ピアスが煌めいた。「あの娘…」「今は、私のところにおります」「引き取られた…お知り合い─ですか」一瞬、瞳を伏せ、「い…
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東方神起BL小説Ⅵ『果実のない街』38

 ─コンクリート色の壁が上へと、吸い込まれて行く。「ユンホ様。どうぞ」背丈はそれほど高くはないが、敏捷そうな身体つきの青年が、歯切れ良い口調で云うと先に立ち、ユノを案内する。  ─ガランとした空間は、屋根が高い。「お入り下さい」小さな脚立のような段を登ると、濃い色の厚い覆いが幕のように下がっている。かなり大きなトラックの荷台らしい。…
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東方神起BL小説Ⅵ『果実のない街』37

 少年のか細い指が、からめとるように手をキツく、握ってくる。…奥に進むほど、辺りは暗い。  少年は先を急ぐように、チャンミンの手を、グイグイ引っ張る。  ─言葉を掛けようとするチャンミンに、手をさらにからませてくる。まるで、恋人同士が二人きりで歩く格好になった。─「お兄さん…」チャンミンの顔を見上げながら、痛いくらいにスリムな身体…
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東方神起BL小説Ⅵ『果実のない街』36

 ─……「マイアミって、ロゴ入りだったら記念品になったな。…でも、買おう」「僕、ビデオコーナー見てます」「うん、ア、このカード使えます? …あそこのヒョウ柄のサポーターみせてください」─チャンミンがビデオを片手に、忍び笑いをした。「ユノ…」「何? …どうした?」─ビデオラックに〈オリエンタル~Mens.〉とあり、その前にいるチャンミンは…
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東方神起BL小説Ⅵ『果実のない街』35

「うん、探してる」「アラ。…何?」暗がりに、紫に見えるルージュの唇を、すぼめ流し目をチャンミンにおくる。「あの、トイレどこですか」「こっち、よ─」 マニュキアの指はごつい。「─ね…」含み笑いをする。「待てない? もう…若いわァ」─ビリッと白のドレスが、裂けた。「アタシのッ─! …やだあっ」真っ白いサンダルのピンヒールが、ドレスの裾を踏…
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東方神起BL小説Ⅵ『果実のない街』34

 「それが軍隊と…」「自慢たらしく、おれは軍隊を特別に除隊した。なんて、云うやつでさ」「特別な除隊を…?」「妙なやつだし関わらないほうが良いよ。─そいつ、探してるやつ?」腕組みして「仲間のバイト先のそいつ常連で─おれは手伝いに行ってたんだ…」「バイト先?」「ポルノ・ショップだよ」  肩にまわされた手にいきなり、力が籠められ…
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東方神起BL小説Ⅵ『果実のない街』33

 紙コップを手にしたまま、「けどさ。…なんでこんなこと?」下を向き、「除隊したらしいってきいたけど、しばらく歌ってなくても、あんたならキレイだし…」また黙った。  「─約束あるんだ。人探してる」「人って…」怪訝な顔が向けられる。「入隊前にある人から頼まれて…軍隊でも探した。ここには最近会った人に紹介されて─」「軍隊?」チャンミンの言葉…
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東方神起BL小説Ⅵ『果実のない街』32

 ベッドの下に腕を伸ばし「紅茶、飲みます?」ディバッグを取り出す。「え?」口を閉じたきりの男は、驚いて顔を上げてチャンミンを見た。 「コップある?」「コップ? そとに自販機あって…」廊下に出ていくと、「故障してる。コップだけ取れた」小さめな紙コップを二つ、肉の厚い手に持ってきた。  差し出される紙コップに、銀色のボトルから、紅茶…
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東方神起BL小説Ⅵ『果実のない街』31

 猪を思わす鼻息、硬い肉の体…。暑苦しくなって、チャンミンが眉を寄せると、のし掛かる力が止まった。「あ…スイマ、セン─」絞り出す声が、情けない。 相手の顔を見上げると、慌てふためいて、チャンミンの体から下りる。「あ…と。すいません」また、謝り、項垂れ、ベッドの隅で、黙って木目の粗い床に、目を落としている。  カーテンもブラインドも…
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東方神起BL小説Ⅵ『果実のない街』30

 のし掛かってくる男の荒い息は、強い酒の匂いがする。「何だ…よ」顔を横に向けるチャンミンの髪を掴み、シャツの衿を引きちぎ切ろうとする。「─へッ」舌打ちして、のろのろと体をチャンミンの上から、起こす。 長めのもつれ、赤茶けた色の毛が垂れ下がる。掻き毟るように、みだれた髪を後ろに払い除け、チャンミンを見下ろした。   黙って、見上げる瞳は…
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東方神起BL小説Ⅵ『果実のない街』29

(チャンミン)スマホの声を、懐かしいものに聞いた。(今、いいか? 少しお前に訊きたい)「云って。ユノ─」(オレンジ色のワンピースの髪長くて、細い…はたち位で─そういう子、知らないか)「─名前は?」(わからない。入院してるんだ、彼女…)─ドアが軋みながら、開く…。「入院?」(今朝、街で倒れてたって。昨夜かららしい…)「誰なんだろう…。でも…
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東方神起BL小説Ⅵ『果実のない街』28

 中でゴトリと重い音。少年はまた、路地裏に回った。    …数分後。パトカーと救急車の到着で、さびれた路地裏はにわかに騒がしくなる。それを尻目に、銀の長いヒゲの獅子のような、堂々とした体躯の雄猫が、開けっ放しな勝手口に入り込み、ガランとした厨房をアチコチ嗅ぎ回りはじめた。  死人のように、真っ青顔の少年がパトカーに乗り…
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東方神起BL小説Ⅵ『果実のない街』27

 キャビネットから、透明なパックBOXを取り出し、ラップのパンを入れた。  ユノのメッセージの下に、短い返事を書き入れ、銀の丸いボールペンを便箋の上に置いた。テーブルのボトルを開ける。   …ほのかに林檎の香りがする冷紅茶。 そのボトルもディパックに入れた。銀色のウィンドブレーカーをはおり、夕闇の迫る、ソウルの街へ、出て行っ…
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東方神起BL小説Ⅵ『果実のない街』26

 ユノがテーブルでサインをしている時だった。─頬にチリチリと、視線を感じて頭を巡らす。…先ほどの二人連れ、─男女のカップル以外の客はいない。  その二人連れに背を向けてテーブルを離れ、巨大なチェス盤の上を歩くような室内を扉に向かっている時も、風のようにさりげない視線が全身を捉えるのを、チャンミンははっきり感じた。  ………
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東方神起BL小説Ⅵ『果実のない街』25

  …………………  ─袖の白の布地が、たっぷりとってある、ブラウス仕立てのシャツが、レンガ色のベストによく映える。「─あれから…どうだ? チャンミン。何か掴めそうか」「ユノ。…そのことで、少しのあいだ帰れないと思う」その言葉に、生成りのニットジャケットの肩をのり出して云った。「…見込みあるみたいだな。いいよ、─待ってるよ」ボルシ…
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東方神起BL小説Ⅵ『果実のない街』24

…「もう春まで、出ないな」途切れた水道を軽く叩く。「おれに話あったんじゃ…?」振り向いた。高い鼻梁を、真冬の影が深く彩る。  ────────  「失せたよ。そいつなら…」あっさりイボンは云う。「失せた?」「急に、居なくなった」「…除隊したんですか」  遠く、落日を眺め、イボンは言葉を継いだ。「脱け出したらしい」「脱け出し…?…
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東方神起BL小説Ⅵ『果実のない街』23

 ─人懐っこい笑顔がユノを思わす。チャンミンより、ひと回り小柄だが、はじき飛ばされた時に感じた筋肉は、思いがけない強い弾力があり、中身が柔らかい感触だった。  「…平気です」男は頷くと、給水場に向かう。灰色のTシャツを脱ぐ。筋肉が覆う身体が、冷気に晒された。 男もチャンミンも、白い息を吐く凍る空気の中だが、寒がる素振りもな…
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東方神起BL小説Ⅵ『果実のない街』22

 群青の空に地上の全ての色が溶けていく海上都市の夕刻。 「法…王?」「金の力ですよ。法王も金の力には弱いようだ…」冷たく、わらった。  「私はこれで失礼します…お目に掛かることも、もうない」黒革のケースを手にした。  凝った装飾の施された象牙いろの高い柱に、据え付けられた黄金に輝く時計が、柔らかい音で、日没の時を告げた…
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東方神起BL小説Ⅵ『果実のない街』21

 …愛しげにチャンミンの頬を両の手で挟み込む。   その姿勢で椅子からゆっくりと立ち上がりながら、「お前の性獣を…今夜も虐めてくれるかい?」おどけた表情の瞳が、チャンミンを覗いた。  ──「あの、若造がッ…」「しかし、彼はもう32でしょう? 若くはない」四方を海に囲まれた眺望が蒼く美しい、ホテルの一室。最上階の部屋らしく…
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東方神起BL小説Ⅵ『果実のない街』20

 リビングにユノの姿がない。…廊下の先の個室を開けると、法律書に埋もれるように、ユノがいた。「珍しいね、─ユノが、…ピンクフロイド─」「うん。『狂気』…特集番組だって」傍らのラディオの歌声を途切れさす…。  細縁のメガネをかけ、書物に囲まれるユノは、レポートに取り組む、学生に見えた。  本の一冊を手に取った。「猛勉強して…
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東方神起BL小説Ⅵ『果実のない街』19

……(よくこんな恥ずかしい格好が出来るなって…僕感心するくらいです)─(あれで、品行方正で…クリスチャンですからね)…─クックッと、喉奥で笑い、「まったく…お恥ずかしい」明るい笑いが止まらない。「こんな内々のことを…私の躾が至りませんで─」笑い声が高まった。「まだまだ、子供だ…」ひとしきりカラカラと笑うと、その笑顔を向け、「わざわざ、こ…
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東方神起BL小説Ⅵ『果実のない街』18

「ぼーっとしてでっかい図体で突っ立ってんなよ」風呂の中から、男がガミガミ云う。ヒステリーを起こしたちび猿の表情で、チャンミンに、「早く、ちゃんとやれって」スポンジタオルを放って寄越した。 「失礼します」貧弱な背に、スポンジを当てがった。 チャンミンが浴槽に体を近づけると、女がチャンミンの背中をさすり始める。  それに構わな…
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東方神起BL小説Ⅵ『果実のない街』17

 「…ね、あなたも、早く脱いで」ちろりちろりとチャンミンを見ながら云う。「濡れちゃうじゃない」狭い浴槽の中で、田んぼのカカシそっくりの身体の男と抱き合い、流し目をおくってくる。「そうですね…」チャンミンが素直に服を取り、体をあらわにしていく。  風呂に浸かりながら、二人の男女は揃って横目を使い、チャンミンの体に視線を這わす。(一体…
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東方神起BL小説Ⅵ『果実のない街』16

増築された場所なのだろう。せせこましい脱衣場のあちこちに、妙な突っ張りがあり、狭苦しいところを、更に雑然と見せていた。その片隅で、ヒョロリとした若い男はボンヤリ縞のシャツを脱いだ。  ちょっと突っつくだけで、折れ曲がりそうな身体つきだ。   ─背に柔らかく、ゴムまりのような、はずむ感触をチャンミンは不意に受けた。  「…や…
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東方神起BL小説Ⅵ『果実のない街』15

 暫く、ゼェゼェと途切れがちな荒い息を、吐き出しつつ、チャンミンの腰を抱きかかえて、あちこちに節くれだった指を、死にかけの蜘蛛の動きでまさぐっていたが、やがて、泣き笑いの老いの皺が目立つ顔で、チャンミンから離れる。  照れ臭そうに、鼻を擦りながらチャンミンを見て、「…若い─」しんみりした、口調で云う。ボテボテの巨大な肉塊の身体…
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東方神起BL小説Ⅵ『果実のない街』14

 ドブ底から涌くような笑い声が、違い棚の置物や壁の絵をビリビリ震わす。巨大な餅を思わす初老の男が、意味もなく笑っている。「若いな、いくつかな」「…30です」同じことを何度も聞いてくる。「いい体格だ、どのくらいだ」「188です…」─それに、クドい。「ワシは酒はやらん。─キミは若いんだからドンドンやりなさい…ドンドン」また、怒鳴るがごと…
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東方神起BL小説Ⅵ『果実のない街』13

 何ごともなかったかのように、マリネーと温野菜のサラダに、フォークを入れるユノに「お分かり頂けたのかしらね」疑り深い声が訊く。 「チャンミンに伝えます。…それでよろしいのでしょう」ワインを口に運ぶ。「まぁ…、あなたの云うことなら、何でもきくんでしょうから」「さあ…?」その気のない答えに、細い眉毛が、ピリッと、はね上がる。「頼り…
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東方神起BL小説Ⅵ『果実のない街』12

 透明な背の高いテーブルにメモがあり、(昼食の約束がある─)とユノの字で書かれている。ソファにかけると、ポケットのカードを取り出した。別れ際に、レオンから手渡されたものだ。  銀の数字が並んでいる。スマホの番号だ。カードの裏を返す。─蓮。と一文字がある。  窓辺が薄くグレーの幕を下ろした色に、変わって行く。朝霧が細かな雨…
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